ハードウェアをはじめとする「モノ」のビジネスにおいて、拠点間でモノを動かすための物流は必ず関わることになる。特に数多くの工場がひしめき、世界における生産の中心である中国との物流は、メーカーにとって切っても切れない重要な存在だ。

こうした中国との物流において、圧倒的な低価格とスピードを武器に存在感を示しているのが、「中国流通王」で知られるスコア・ジャパン。ブランド名こそ中国を冠しているが実際には本社を東京都亀戸に置く日本生まれの企業だ。

スピードと価格面において、起業まもないスタートアップにとって頼れる存在でであるスコア・ジャパンの設立経緯や事業の方針について、営業1課の青柳和成氏、山田順一氏に伺った。

「物流の素人」が薄利多売を武器にビジネスを立ち上げ

 2018年で創業20年を迎える株式会社スコア・ジャパンだが、創業は代表取締役社長を務める大沢理氏が、学生時代に中国留学していたことがきっかけだ。

東京・亀戸にあるスコア・ジャパン本社。1階が物流センターになっている
東京・亀戸にあるスコア・ジャパン本社。1階が物流センターになっている

スコア・ジャパン創業の地でもある東京・小伝馬町には、1980年代の後半にアパレル関連の問屋が多く存在しており、香港や台湾から多くのバイヤーが訪れて衣類や雑貨を大量に買い付けていたという。そしてこうしたバイヤーの多くは、通常よりも高額だったり、時には非合法な配送サービスを利用して、買い付けた商品を自国に送っていたのだ。

 留学からの帰国後にさまざまなビジネスを手がけていた大沢氏は、小伝馬町の問屋から「何かもっといい物流の方法はないのか」という相談を受け、「安くて早い国際宅配便事業はビジネスになる」と判断、スコア・ジャパンを起業することとなった。

当時はアルバイトと2名で立ち上げ、中国への配送も大沢氏が自ら担当。物流の基本的な知識もなく、「シッパーって何のことですか?」(※Shipper、荷主のこと)と、他の物流業者へ質問してしまうほど物流の素人だった大沢氏だが、薄利多売を武器としてビジネスを積極的に展開、現在に至っている。

「郵便より安い」価格を実現するための徹底的なコスト削減

中国流通王が対中国とのビジネスを行う企業にとって欠かせない最大の理由は、他社と比較しても圧倒的に安い価格にある。スコア・ジャパン営業1課の青柳和成氏によれば、コストの徹底的な削減がこの価格を維持できている秘訣だという。

「弊社は自社の飛行機を所有していませんので、航空機の維持費用はありませんし、社内の設備も他社と比べてそれほど大きいものではなく、コストはそこまでかかっていません。輸送に使う飛行機は全日空、日本航空、そしてLCCなど複数の航空会社と日々交渉し、安価な時間帯の便を使うなどの調整によってコストを下げています」。

 中国との物流ではおなじみの存在とも言える、ビニールテープでぐるぐる巻きになった段ボールも、中国物流においては大事な取り組みの1つ。物流網が隅々まで行き届いており、対応も高品質を要求される日本とは異なり、中国の物流はいくぶん「荒っぽい」。荷物が放り投げるように扱われたり、雨が降っている中で段ボールのまま運ばれる、ということも実際に起きうるのが実情だ。

これは日本と中国における文化の違いでもあるのだが、こうした扱いの中でも荷物を守り届けるために地味ながらも効果を発揮するのが、前述の「ビニールテープぐるぐる巻き」段ボールだ。徹底的にテープで保護することで防水性や耐衝撃性を高めることが、コストを低減しつつ大切な荷物を搬送するための手法として中国の物流では標準的な梱包となっている。

中国物流の名物とも言えるテープで厳重に梱包された段ボール
中国物流の名物とも言えるテープで厳重に梱包された段ボール

中国グループ企業とのシナジー効果でさらなるコスト低減

会社の仕組みもコスト低減につながる要因の1つ。国際宅配便事業では日本国内での集荷や各種手続きなどに加えて、中国現地での配送作業なども必要となる。

通常であれば現地の事業者に委託するコストが発生するが、スコア・ジャパンでは中国に配送会社をグループ企業として持っており、日本で利益が出なくても中国で利益が出せればグループ全体としては問題がないという仕組みを作り出しているという。

スコア・ジャパンの配送センター
スコア・ジャパンの配送センター

とはいえ基本は薄利多売のビジネスであるがゆえに、利益を最大化するための顧客新規開拓も積極的に展開。「使っていただける会社が増えれば、輸送量も増やせるので、航空会社とも優位に交渉でき、それが低価格の維持につながります。航空会社にとっても、月に1回だけ10トンの荷物を送る会社より、少量であっても毎日荷物を出す我々のような会社の方が喜ばれるんですね」。

配送のスピードはもちろん、ビジネスのスピードも重要だ。例えば新しい商談が発生した場合、大手だと見積書のやりとりに数日かかることもあるが、中国流通王ではその日中には金額を出せるようにしているという。このスピード感も多くの企業が魅力を感じているポイントの一つと言えそうだ。

年間1回、書類1通からでも迅速に対応

中国流通王を利用したい企業は、事前に審査を申し込む必要がある。「弊社のWebページにフォームを用意していますので、そちらから申し込んでいただければ審査をさせていただいて、ご連絡しています」。

具体的な審査基準などは公開されていないが、基本的にはビジネスがすでに動き、売上が立っている法人また個人事業主であれば対応するという。なお、まだ起業前だったり、起業はしたが売上が発生する前の状態では残念ながら対応は難しいとのことだが、審査さえパスすれば取扱量や数などの制約は一切ないという。「年間一つでも、書類一通でもお預かりいたします」。

東京都内や大阪、名古屋など、スコア・ジャパンの本店・支店エリアであれば、スコアジャパンが直接集荷や配送を行ってくれる。また、エリア以外の場合は佐川急便などの国内宅配便業者を利用した集荷や配送が可能だ。

船便や倉庫業など新たなビジネスも展開

スコア・ジャパンの物流は、日本から中国への発送と、中国から日本への発送という2つに大きく分けられるが、全体の輸送量のうち6~7割程度は中国からの発送が占めている。

 中国から日本への物流はB2C比率が上がっており、現在では輸送量の半分近くがB2Cという。中国で生産したものを日本の倉庫ではなく中国国内の倉庫で保管し、日本からの発注を受けて中国から日本の消費者へ直接発送する、というケースだ。こうしたB2Cで発送される製品の多くは衣類・雑貨だが、最近ではスマートフォン関連などのハードウェアも伸びているという。

 一方、日本から中国への発送はB2Bが中心。本媒体を運営するCerevoを例に取れば、中国から取り寄せた材料を用いてサンプル試作を開発、これを中国の工場に送って、量産は中国で行う、といったケースだ。

 どちらの場合も中国流通王の強みは、集荷から配送までドアtoドアで最短翌日午前中配達を提供するという圧倒的なスピード。一方で、より低価格な輸送手段を提供する新規事業として船便もスタート。中国南部、香港などから大阪港行きの便を用意している。「船便は2週間ぐらいかかりますが、コンテナに入れてトン単位で大量に発送できますし、航空便よりも安価に提供できますので、今後力を入れていきます」。

 さらに物流だけでなく保管業も新たにスタート。成田と大阪の南港に倉庫を用意し、商品の保管、注文ごとにピッキングして配送するところまでを網羅的に取り組んでいる。

「考えるより先に動く」。ビジネス展開も迅速に

 物流でのスピードだけでなく、船便や保管業といった新規ビジネスの立ち上げスピードもスコア・ジャパンのこだわり。スコア・ジャパンでは常に新しいビジネスも模索しており、事業部と社長直属の社長室のメンバーでアイデアを出し合ったあと、4人の執行役員により、素早く動き出す仕組みがあるという。船便や倉庫業などもこの数年に動き出した新しい事業の1つだ。

「考えてから動くのではなく、まず動く。動き出すまでのスピードをアップするということを社長からも言われています。中国流通王のほうでも、営業は毎日5社、6社と回ってお客様のニーズを常に探しています。その中で面白いと思ったことはすぐにキャンペーンとしてテスト商品化して、お客様に提案するようにしています」。

航空便もサービス開始直後は日本から中国、香港、台湾への配送は3日以上かかっていたが、今では前述の通り最短で翌日午前中には届くまでに早くなっている。こうした物流スピードに加えて、業界最安価格を維持し続ける中国流通王は、徹底したコストカットの仕組みと、高い営業力、新規サービスを生み出し続けるビジネスモデルがあった。

 スコア・ジャパン営業1課の山田順一氏、青柳和成氏
スコア・ジャパン営業1課の山田順一氏、青柳和成氏

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